新宿南口にある、紀伊國屋書店6階の洋書売り場で、びっくりするほど読みやすいフランス語のペーパーバックを見つけました。
平積みされた、その美しい装丁のフランス語のペーパーバックは、
Le Voyage D'Hector Ou Le Secret Du Bonheur という本です。
まだフランス語の力が不足している私は、冒頭の第1パラグラフがすんなり読めるかどうかを、フランス語の本えらびの、いちばんの決め手にしています。
ですから、この本を手にしたときは、あった! と心の中で小さく叫びました。
なぜなら、冒頭の第1パラグラフどころか、1ページがすんなり読めてしまったからです。
Il était une fois un jeune psychiatre qui s'appelait Hector et qui n'étais pas très content de lui.
第1パラグラフは、上のように、わずか1文でしたが、あまりに平易なフランス語なので、胸がどきどきしてきました。
しかも、どことなく、とぼけた感じのするフランス語の文体が、親しみを増してくれています。
つづく第2パラグラフは、下のような、人物描写でしたが、tortillait など見慣れぬ単語もありましたが、フランス語の平易さは、少しも損なわれませんでした。
Hector n'était pas content de lui , et pourtant il ressemblait à un vrai psychiatre :
il avait de petites lunettes cerclées qui lui donnaient l'air intellectuel ,
il savait écouter les gens d'un air pensif en faisant " mmh... " ,
il avait même une petite moustache qu'il tortillait quand il réfléchissait très fort.
このようにして、1ページがすんなり読めてしまった時点で、私は、興奮のあまり、手にしたペーパーバックをパタンと閉じ、購入することを心に決めました。
これだけ平易な単語と構文がこのままずっと続いてくれるなら、まだフランス語の力が未熟な私でも最後まで読み通せる、と確信できたからです。
「外国人学習者向けのフランス語読本」というわけではなく、「フランス人向けのペーパーバック」で、これほど平易なフランス語で書かれているものは、そうそうありません。
私の本箱には、途中で、挫折したフランス語のペーパーバックがたくさん眠っていますが、今度こそ、最後まで読める、と自信を抱かせてくれる、屈指の読みやすさです。
家に帰って、さっそく調べてみると、
この Le Voyage D'Hector Ou Le Secret Du Bonheur の著者である、フランソワ・ルロール(François Lelord)という作家は、主人公と同じように、フランスの精神科医のようです。
幸福はどこにある‐精神科医へクトールの旅 という邦訳もあり、どうやら、フランスではベストセラーになったこともある、有名な本だったようです。